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砂漠 [書籍]

砂漠

砂漠

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本


作家、伊坂幸太郎が描く青春モノ

麻雀、合コン、バイトetc……普通のキャンパスライフを送りながら、「その気になれば俺たちだって、何かできるんじゃないか」と考え、もがく5人の学生たち。社会という「砂漠」に巣立つ前の「オアシス」で、あっという間に過ぎゆく日々を送る若者群像を活写。日本全国の伊坂ファン待望、1年半ぶりの書き下ろし長編青春小説!


今作はミステリという体裁すら取っ払い純粋な青春群像劇に仕上げたということらしい。北村という青年の視点を軸に、彼を取り巻く仲間たちとの大学生活を入学から卒業までという区切りで描いている。大学生活を社会に出るまでの猶予期間と捉え、冒頭にあるサン=テグジュペリからの引用どおりそれは社会という砂漠の中の“オアシス”として後の人生に機能する、それを描いてみようということらしい。

大学に入学した北村は自然と集まった仲間たちと日々を送る。調子がよく女遊びの激しい鳥井、やたら自己主張が激しく熱い西嶋、クールな美人の東堂、超能力を使える女性・南という面子は時折集まり特にこれといってドラマチックでもないやり取りを重ねていく。ついた離れたの恋愛模様や小さな冒険も感情の起伏のない主人公の語り口によって客観的に提示される。

こうやって書いてみると何が面白いんだと思われそうだが、正直今一つだったとしか言いようがない。描きたかったのはおそらく傍観者でありストーリーテラーとして冷静だった主人公が仲間たちとの出会いにより徐々に徐々に関係性を構築して行き喜怒哀楽を表現するようになりいつのまにか当事者として物語に組み込まれていくというような話なのかもしれない。ただまぁどの描写についても掘り下げが足りないような印象を受けるし描写そのものが大学生の最大公約数的エピソードばかりなので、読み手にある程度自分自身の過去や見識が必要になってくるような。主人公を通して大学生活を疑似体験させるという部分においてもなんだか凡庸すぎる。共感し楽しむには刺激が足りず、疑似体験するにはドラマが足りないというか。

作者の手癖である会話のとぼけた味わいや人間関係賛美の部分はかろうじて保っているが、情緒が無いというかTVのテロップ的というか親切というか・・・「ここはこういうことなんだよ」と説明するような描写や会話が目立ちすぎていてどうにも乗り切れない。とはいっても要所要所で的確な情景描写を挟み盛り上がりをきちんと作っている部分もあるのでこの薄っぺらさと味気なさは意図的なものなんだろうかとまた疑問が。それでもこの作家の書く作品の効能を信じて最後まで読み通したが、最後の締めで切れてしまい。とぼけなくてもいいんだよそこは。とぼけたことで安っぽさがもう大変なことに。

ぐいぐいと読ませる力はあるんだが、こうやって振り返ると騙されていたような気持ちになる作品でした。どうしたものか。


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