猫にかまけて [書籍]
町田康のエッセイ集。
作者が飼っている・・・もとい共同生活をしている/していた猫たちについてあれこれと語っている作品。4匹の猫が登場し、彼らと作者の微妙な関係を軽妙な語り口で表現している。エッセイという事で作者の語り口にはいつも通りユーモアが加味されており、猫を擬人化することで親しい友人との付き合いのような距離感があり、立場的に猫≧作者なエピソードが多い。しかし、単純に楽しい共同生活を描くだけでなく去っていく様もきっちりと描いている。
ヘッケという猫の章はもともと弱っていた彼を拾い看病するというものなので、そういう側面を見せようとしているのだなとあらかじめ分かった上で読むことになる。その為一面的な印象を受けるのだが、ココアという猫については序盤のユーモラスなエピソードから登場しその世界観で人物造形をされていた為、彼女が去るエピソードは思った以上に胸を打つ。文章が日記風に綴られているのも効いている。
全体的に観た場合、笑いと悲しみのバランスが上手く取れていて、この作家の作品としては稀な“愛情”をストレートに描いていることもあり、心温まる作品になっている。作者の自己劇化によるいつもの文体の調子が徐々に崩れ、素直な葛藤や慈しみの気持ちを吐露していく様は好感が持てた 。
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