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Happy! [漫画]

Happy!―完全版 (Volume13)

Happy!―完全版 (Volume13)

  • 作者: 浦沢 直樹
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/06/30
  • メディア: コミック


漫画家、浦沢直樹が描く“YAWARA!”

主な登場人物/海野幸(両親に先立たれ、3人の弟妹を育てる健気な娘。2億5千万円の借金を返すためプロテニス選手の道へ)、竜ヶ崎蝶子(竜ヶ崎財閥の令嬢。実力も兼ね備えたテニス界のアイドル。だが、その本性は…)、鳳圭一郎(鳳財閥の跡取り息子。幸の初恋の相手)、桜田純二(「ビッグバンファイナンス」営業主任。幸の借金取り立て担当)●あらすじ/全仏オープン2回戦。蝶子は無敵の女王・ニコリッチから第1セットを先取し、次のセットも3-0と優勢に試合を進めていた。奇跡を予感して、興奮に包まれるマスコミや観衆たち。だが、幸のバックにいる鳳唄子やサンダーは、女王のプレーを狂わせた本当の理由を悟って…(第203~4話)。●その他の登場人物/サブリナ・ニコリッチ(女子テニス界に君臨する女王。今回のウィンブルドンを最後に引退を表明)、サンダー牛山(幸のコーチ。飲んだくれで手クセも悪い)、鳳唄子(圭一郎の母。鳳テニスクラブの総帥)、賀来菊子(蝶子と並ぶ女子テニス界の新星だったが、暴力事件を起こしてプロ資格を失う。幸の理解者)、鰐淵京平(桜田の親会社の社長。欲しい物はすべて金で手に入れる主義)、弁天橋雛(圭一郎の結婚相手に選ばれた女性。胸が大きい)、海野家康(幸の兄。海野家の莫大な借金を作った張本人)、舵樹・沙代里・三悟(幸の弟妹)


当時並行して連載されていた「MONSTER」と対を成す作品。あちらは医師が、彼のアイデンティティである「偽善性」から本当の意味合いでの「善意」へシフトするさまを魅せる、そういう作品ですが、この作品とテーマは同じ。「不遇の人物へのエール」です。

ぼろアパートで細々と暮らしている3人兄弟。父親、つまり“自分のせいではない”借金のために借金取りにひたすら追い込みをかけられ続けている。そして主人公の高校生・海野幸はテニスプレイヤーとしての才能がありながらも生活に追われていると。裕福な先輩のまったくしがらみと世間を知らない配慮に戸惑い、借金取りとして派遣されたお人よしのやくざ、この2人が彼にとっての物語上の恋愛という軸の一つでの3角関係を“演ずる”ことになる、と。主人公は古典的な耐える女性を演じ、ひたすら“借金を返すために”奔走すると。まぁありたいていに言うと“債務者”と“債権者”という世知辛い環境におけるなんだかわけの分からない関係性、長いこと関わっているうちに“金を返してもらうため”という題目から情が移り“恋愛”という・・・まぁいわゆる仕事からプライベートってことですか、そういう風になっていくと。裕福な家庭に生まれながら上昇志向の強い女性の嫉妬と策謀で何度も窮地に立たされ・・・そんな事情なんて何も知らず主人公は“プレイヤー”として才能を発揮するだけだと。

この作品の面白いところは、主人公自身は完全に“蚊帳の外”ということで。周りの人間たちだけが相手の事情を知り・・・それが彼女にとってメンタル的にまずい、スポーツ選手のモチベーションを下げることになる、それは借金を返すことの妨げになり、営業妨害であり・・・、正直聞いてられないほど残酷な話だと。あれこれ建前つけているが彼女のテニス選手としての1ファンであり、それゆえに彼女の才能を潰したくない、それで彼女の生活という枠組み・・・上の思惑や個人の思惑や周囲の“彼女が好意的な人物”・・・つまり、彼女の価値観を絶対に崩さないように画策する。単に借金苦の女性である、そう思わせることがある意味“幸せ”だと。裏を見せたくないというある種の“善意”なわけでして。

その甲斐あって彼女は与えられたチャンスにひたすら挑戦し勝ち残っていき・・・結局“しがらみ”をすべて“実力”で跳ね除ける、そういうサクセスストーリーを描き出したと。そして恋愛というサイドストーリーでは・・・男性陣が彼女の“世界観”を守るために情報を意識的にシャットアウトし、“日常に根ざした回復可能な夢”を見せてあげると。

そして、結末は“恋愛”という物語は壊れ、“人生”という点では軌道回復し。こうやって書いてみるとハートウォーミングストーリーと思えるが、この作者の手癖として“哀しい諦観を混じえたシビアな現実の提示”というものがあって。つまり、ある人物が成功するまでに払った“犠牲”、それを描き出している、と。

あの当時の風潮とはいえちょっと厳しいです。面白さは保証つきですけど。ちなみに画像のキャラクターはお坊ちゃんで主人公の夢を応援していたアマチュアテニスプレイヤーですが陰謀によって手首の腱を断裂、再起不能と診断され、最後に彼女が世界のトップに上り詰めたのを観て・・・その“努力”を観まもっているうちに“再起”を考え行動に起こす、と。新世紀の“YAWARA!”です。お試しあれ。


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